◯広報はだの16年1月1日号4面5面 広報はだの 平成28年(2016年)1月1日 4 5 平成28年(2016年)1月1日 「大好き」の その先へ―  若者らしい、アクティブな活動で「世界」を見据える秦野ゆかりの4人を紹介。自分と向き合い、「大好き」から、さらに一歩先へ踏み出そうとした転機や、今年の目標を語ってもらいました。 卓球  静岡県富士宮市出身、東海大学理学部2年生。生まれつき骨が折れやすい先天性の病気で車いす生活を送りながらも、昨年は肢体不自由者卓球の全国大会で2位、台湾・ベルギーの国際大会で銀メダルを取るなど、輝かしい成績を収めている。 土井 健太郎さん(19歳) 初めの一歩  きっかけは、小学6年生のとき。僕も双子の弟の康太郎も同じ病気であまり外に出なかったので、母が地元の障害者卓球クラブを見つけてくれたんです。メンバーは年配の人がほとんどでしたが、みんなにかわいがってもらえたおかげで卓球が好きになり、中学では2人とも迷わず卓球部に入部。健常者にも負けないくらいに腕を磨きました。高校でも毎日練習して、初の全国ベスト4入り、一昨年は2人そろってルーマニアの国際大会で銅メダルを獲得できました。今は地元のクラブのほか、秦野の総合体育館でも父と練習しています。秦野はいい具合に田舎なところが地元に似ていて、落ち着くんです。 魅 力  好きだった野球に似ていたのが良かったですね、打つこととか(笑)。あとは、戦術の奥深さ。僕たちのような選手は、瞬時に体を移動できないので、サイドを狙われないようにすることが必須。だから、球に回転をより強くかけたり、コートの端ギリギリに打ったりと、失敗と紙一重の技術が人一倍求められます。体の大きな海外の選手はよく力技で攻めてきますが、それを技術で破る瞬間がたまらないですね。 乗り越えた壁  去年の5月、弟の康太郎が心臓の持病で亡くなったんです。そのときは頭をよぎりましたね、「卓球続けられるのか」って。でも、ここでやめたら康太郎は悲しむだろうし、それに、約束したんです、「東京パラリンピックの決勝で戦おう」って。僕が決勝までいけば、約束を半分果たせたことになりますから。 次なる一歩  改めて周りの人に感謝するようになりました。弟の思い、家族、クラブ、みんなに支えられているんだなって。だから、「みんなの夢」を乗せて、頑張ろうと思っています。弟のことで家族の雰囲気も少し暗くなっているので、僕が大会でいい結果を出して、明るくしてみせます。 目 標  パラリンピック出場のためには、世界ランク10位以内に入ることが必要です。今はまだ30位くらいなので、コツコツ順位を上げていきたいです。  今年の漢字は「挑」。出場したことがない国際大会に挑戦して、ライバルを探したいです。あと、「アスリートフードマイスター」の資格も取得したいです。自分の栄養管理も完璧にしたいので。いい成績が残せたら、秦野に表敬訪問させてください。 野球  秦野市在住。5歳のときに父親が監督を務め兄が所属する少年野球チームに入団。ポジションは外野手。高校時代から社会人チームのアサヒトラスト女子硬式野球部に所属し、昨年はレギュラーとして出場した大会で優勝。今年からは日本女子プロ野球に入団して活動する。 加藤 優さん(20歳) 初めの一歩  好きか嫌いか分からないうちに、野球を始めていました。幼いころは女子のプロ野球がなかったため、目指すものが定まらず、ただがむしゃらに頑張っていました。しかし、中学2年生のときにワールドカップに女子日本代表ができて、野球で世界へ行くという目標が明確になりました。高校で一度、ソフトボール部に入部しましたが、より親しみのある野球を続けたいという思いが強く、半年余りで退部し、アサヒトラストに入団しました。 魅 力  野球は、楽しいことの方が少ないです。でもその分、勝ったときの喜びが本当に大きい。チームプレーなので、優勝したときにみんなで喜べるところが魅力の一つです。この一瞬のために、きつい練習も頑張ろうと思えます。 乗り越えた壁  私は野球の他に、趣味で歌とギターをやってきました。それが、今所属している芸能事務所のマネージャーの目に留まり、デビューしました。野球で結果を出す前にメディアに取り上げられたので、野球に集中できない時期がありました。でも、プロ野球チームの監督をしていた野村克也さんの「自分を理解してくれる人は、一人いればいい」という言葉に救われ、私は自分を信じて、野球を中心に活動していきたいんだと強く思い直すことができました。今では目標がぶれることなく、めりはりをつけて野球もアーティスト活動もできるようになりました。 次なる一歩  去年、女子プロ野球の入団試験を受けました。関東ブロックでは30人受けましたが、スイングスピードの速さと守備の動きを評価され、合格者4人の中の1人に入ることができました。プロ入りが決まりアサヒトラストを退団してからは、アルバイト、野球と歌の練習で毎日を過ごしてきました。最近、女子の野球を観戦する人が増えてきたように感じてうれしいです。見られているという意識を持ってプレーしていきます。 目 標  将来は日本代表のレギュラーとして女子ワールドカップに出場したいです。そのためにまずは、女子プロ野球でレギュラーになることを目標に練習や試合に臨みます。  今年の漢字は「備」。何事にも準備が必要です。特に今年はプロとして活動するため、いつでも全力でプレーできるよう備えます。 フラ  秦野市在住。茅ヶ崎の教室「カロケメレメレフラスタジオ/トカリガ」で、5歳からフラのレッスンを受けている。昨年、仲間11人と出場したハワイの「フラ・オ・ニエ大会」子供の部で、現代フラ優勝と総合優勝を果たし、ソロでは「タヒチ・ヘイヴァ・イン・ジャパン福岡大会」で優勝を勝ち取る。 久保寺 あくあさん(12歳) 初めの一歩  小学校に入学したとき、友達に誘われてフラを始めました。週1回茅ヶ崎に通い、基礎練習と、先生に教わる振り付けを覚えて、動きの確認をみんなでやります。1カ月くらいかけて1曲を完成させますが、柔らかい動きでやさしいイメージの曲から元気でテンポの速い曲まで、いろんな踊りができて楽しいです。レッスンを重ねる度に好きになり、気付けばフラを続けて7年になります。 魅 力  フラは、全ての動きに意味があります。歌に合わせて先生が振り付けをするので、同じ曲でも、先生によってさまざまな踊りが出来上がるのが魅力です。私はリズム感のある曲が好きで、中でも島を旅する曲「レイ・コー・エレ」がお気に入り。動きはハードですが、心がウキウキします。楽器を持って踊る曲もあります。曲に合わせて楽器の音がリズムよく鳴り響いて、心地いいんです。 乗り越えた壁  初めて大会に出場した小学4年生のとき、レッスンが毎日続いて、時には1日8時間練習することもありました。手先の動きから体の向きまで、みんなできれいにそろえなければいけなくて、先生に何度も注意されました。厳しい指摘にくじけそうになることもありましたが、みんなで声を掛け合って何度も練習しました。それから、自宅では練習用の大きい鏡を置いて、苦手な動きや心配な振り付けを客観的に見るようにしました。繰り返し踊って体に覚えさせることで、自信を持って大会に臨むことができました。去年は団体でもソロでも優勝できて、本当にうれしかったです。 次なる一歩  フラは、動きをきれいに見せたり、みんなで合わせたりすることが重要ですが、一つ一つの動きの意味を理解して踊るのもすごく大事。形にこだわるだけでは、本当のフラにはなりません。レッスンでも本番でも、歌のイメージと動きの意味を大切に、心を込めて踊るようになりました。 目 標  純粋に、フラを楽しみたいです。大会に力を入れた去年は練習漬けであっという間に過ぎましたが、その経験を糧にじっくりと向き合っていきたいです。動きがしなやかで、踊る曲によって雰囲気が変わる先生のようになりたいです。  今年の漢字は「笑」。もうすぐ中学2年生になるので、フラも勉強も部活も、楽しみながら頑張りたいです。 クライミング  秦野市出身。両親がクライミングジムを営むクライミング一家の長男。競技を本格的に始めてまだ1年半ながら、昨年11月の県山岳連盟主催の大会で10位に。各地の大会などにも遠征し、上位入賞するなど活躍を見せている。 濱本 新太さん(11歳) 初めの一歩  僕は、2歳くらいのときからずっと、沢で岩場を登るお父さんを見てきました。小学生になると一緒に登り始めて、だんだん好きになりました。今はお父さんのジムで、2日に1回は練習をしています。お父さんは、クライミングをしていると急に厳しくなるけど、いろいろ指摘してくれてうれしいです。4年生になってからは、ロープを使った「リードクライミング」という競技の大会に出場しています。自分より上手な人がたくさんいることを知って、もっと頑張ろうと思いました。 魅 力  クライミングは、体だけじゃなくて、頭も使います。より難しいコースをどう登ればいいかを自分で考えて、登れたときはすごく気持ちがいいです。それに、いろんな人と仲良くなれるのもうれしいです。初めて会った人が「ガンバ」と応援してくれたり、アドバイスをくれたりするし、僕が大人に教えることだってあります。クライミングをしていると、仲間がどんどん増えます。 乗り越えた壁  僕は体が小さいので、ホールド(岩)に手が届かないことが多かったです。だから一生懸命練習して、手足を対角線上に伸ばす「ダイアゴナル」や、ジャンプしてホールドを取る「ランジ」などの技を磨いて、遠くに手が届くようになりました。 次なる一歩  大会で勝つために、会場になる秦野の県立山岳スポーツセンターで本格的な練習をしたいと思うようになりました。15メートルの高さまで登れる、県内で一番高い練習場です。インストラクターがいないと使えないので、今まで練習ができなかったけど、去年の4月に新しくできた「神奈川ジュニアスポーツクライミングクラブ」に参加して、月2回、練習できるようになりました。ホールドもレベルが高いし、大人も使っているので、すごくいい練習になります。 目 標  スポーツクライミングが東京オリンピックの追加種目候補になって、すごくうれしいです。お父さんの得意な、ロープを使わない「ボルダリング」という種目で、絶対出場したいです。クライミングの面白さをみんなに伝えられるくらい、活躍したいです。  今年の漢字は「登」。自慢の身軽さと瞬発力を生かして、とにかく何かの大会で、1位の表彰台に登りたいです。