広報はだの9月1日号 3面 No.1154 チカイナカ 秦野をもっと近くする サブカル目線の田舎の魅力  若者に秦野をもっと知ってもらうにはどうすればいいか。近年マスコミをにぎわすのは、アニメやゲームなど、いわゆるサブカルチャーの人気。リオ五輪の閉会式では、安倍首相も人気ゲームのキャラクターに紛し、世界の注目を集めた。この「日本のサブカル」を味方につけない手はない。にわかに広がりを見せる、秦野のコスプレイベントを取材した。 初めての「山の日」を迎えた8月11日。丹沢の豊かな自然に感謝しようと、この日は飲食店の山盛りメニューなど、まちを挙げてさまざまな記念イベントが実施された。  そんな中、丹沢の山並みを間近に望むカルチャーパークの広場では、カラフルな衣装を身にまとったコスプレイヤーたちが続々と姿を現した。  「まずはこの噴水の前で撮ろうよ」 集まったのは、主に10〜20代の女性たち。人気アニメのキャラクターになりきろうと、ウイッグやカラーコンタクトはもちろん、中にはお手製の武器を用意した人もいた。暑さをしのごうとプールにやってきた来園者を尻目に、それぞれが慣れたポーズと顔つきで写真を撮っていく。  「あ、この写真いいね!雰囲気出てる」  カメラの画面越しに笑顔で確認し合う様子は、旅先の旅行客と変わらない。意外なのは、道行く人があまり不思議そうな顔をしないことだ。  「よく見掛けるよ。初めはビックリしたけど、楽しそうだし、愛想やマナーもとてもいい子たちだよ」  教えてくれたのは散歩中のおばあちゃん。確かに、周りの迷惑にならないよう気に掛けているのが分かる。  「子供が知ってるキャラクターも多いので、家族連れが声を掛けてくれることが多いです。イベントを知って来てくれた人もいました」 と話すのは、市内の友達と4人で参加していた県内在住の20代女性。秦野の撮影会にはよく来るそうだ。  「山や季節の花があったりと、奥行きと緑のある背景は、アニメの世界観によく合うんです」  都会にも緑はあるが、建物など余計なものが多くて撮りにくいという。また、今回初参加だった、都内に住む20代女性は、  「好きな自転車のアニメで秦野を知りました。自然豊かで最高。今度は私服で、山や街歩きをしてみたいです」 と、身近な田舎との出会いを喜んでくれた。 サブカルチャーを発信力に  今回の山の日撮影会を企画したのは、コスプレQ代表の鈴木渉さん(44歳・平塚市)。15年ほど前に文化会館でイベントを初開催し、毎年、市内を中心に活動の場を広げている。  「私たちサブカル好きも、こうして山の恩恵を受けている一人ですからね」  水無川沿いの桜が満開になる季節には、毎年多くのコスプレイヤーが集まる。これも、鈴木さんが仕掛けた撮影会がきっかけだ。  「埼玉や栃木からも来ますね。コスプレの世界ではもう、関東で1・2を争う桜の聖地ですよ」  テレビや新聞などに取り上げられたこともあるが、何よりツイッターなど、SNSの効果が大きいという。  「コスプレイヤーの方は、知らない人同士でもすごいスピードで情報を拡散させるんです。それに、きれいな写真を公開するから一般の方にも興味をもってもらえるんですよ」  田舎らしさとサブカルチャーのコラボはまちの魅力発信に不可欠だと、最近は観光協会や飲食店と協力し、まちを巻き込んだ活動に精を出し始めた鈴木さん。彼らの新たな目線は、若者が秦野を知る大きな糸口になりそうだ。 ▲水無川の人道橋で、記念の山ポーズ ▲カルチャーパークの「バラ園」も絶好のスポット ▲1㎞以上続く桜と丹沢の背景は、最高の田舎風景 ▲お互いに仲良く撮り合い、写真の出来栄えに笑顔 「秦野には若者を呼ぶ力がある」と鈴木さん